2017-01-01から1年間の記事一覧

ライフ

失うじゅんびはできているか

月夜

新宿のビル群の上を 月の光をすかしながら 薄雲がすべっていくのを見た 昨日 網戸越しの風に吹かれ 見上げた月と同じ月か いま 月と見つめあっている そんな誰かが ぼく以外にいるだろうか 友だちや家族 大切な人たちは 眠れているだろうか 布団は太陽の匂い…

失う道程

人生は失っていく旅だ 大切なものを失っていく それは隣の誰か それは健康 それは自分自身 必ず死を迎える私たち 失うことははじめから決まっている 大切なものが増える度 大切だと分かる度 その恐怖は増していく 人生は気づいていく旅だ なんでもないことが…

医療

口から管をいれ 肺を自動で膨らませて 鼻から管をいれ 胃に液体を注いで 薬を使って 心臓を動かしたり 眠らせたり 人に体をいじくりまわされ 煙たがられて面倒がられて 誰にも心配されず 手足を縛られ 糞尿を撒き散らす わたしのやっていることはなんだろう …

怖い

まわりの反応に敏感に応える 自分が苦しくないように そればかりを考えている 怒られない言い方で 嫌われないよう謝って 業務が立て込んで頭が真っ白 怖い 怖い 怖い そればかり 病にある人 その人を放置し 自分が終わらせたい業務をこなし 先輩の立場で言葉…

先輩看護師

「余計なことしなくていいから手順だけ教えて」の言葉を受けて、おれは嫌な気持ちになった。それはどこかでおれのやっていることは余計なことであると言われた気がしたからだ。さらにおれ自身も余計なことかもしれないと思っているからだ。 おれへの信用のな…

死ぬことがわかったら

花の寿命 命の長さ 生きるということ 私は 生きているだろうか もう生きることはできなくなった 若い魂 死にゆく身体 永遠の魂 家族には別れが訪れる 心の準備とは 毎日の中で気持ちを 伝えてきたかどうかだ 言葉はいつも言い足りない ぬくもりは忘れたくな…

卑怯

僕は話しかける 人懐っこく ほめられるために 好かれるために 笑顔を返してほしくて 受け入れてる 認められてる そう感じたいから 僕は話しかける 笑顔を向ける おどけてみせる 全ては自分をわかってほしい そのために 人に優しくする 自己憐憫から かわいそ…

笑顔

息子が笑う たいていは 「おはよう」と朝 声をかけたとき 母親に名前を呼ばれ話しかけられたとき クマのぬいぐるみと目が合うとき 人はこの世に生まれて 2ヶ月たったころにはもう 笑顔をむけられると 笑顔で応えるようになった それは本能か反応か 生きて行…

老いること

いつか いつかぼくも身体を壊し 不調の中で 自分が一番かわいそうな 誰も自分をわかってくれないような そんな そんな気持ちに支配されるだろう 歳をとることは 病を得るということは 身体が衰えうまく動かなくなり 食べ物はまずくなり なにも覚えられなくな…

ただひたすらに

それでいいんだよ そう言われているように 様々な人の口を通じて ねぎらいの言葉が贈られる 暗闇の中にいるその人が さらなる闇に溺れないために ひたすらにできることを 息苦しさの中 僕の名前を呼ぶしかなかった人 自分がどこでなにをしているのか わから…

風が遊んでいる 麦畑は波を打ち 金色になびいている その喜びは 地平線にいざなわれ やむことのない胸騒ぎ オーケストラは主題に入る 主旋律は生きる歓び 伸びやかなチェロのソロは 摂理を理解する寛容さを見せる 夕立が迫り陽が陰る 過ぎ去っていくと知りな…

微熱の雨

静かな雨 微熱のベイビ 母の胸にうずもれて ぐずぐずひんひん でもほんとは安心 ずっと泣いてていいんだから 傘の中 車の音 小学生の列 しっとりと濡れた街並 4ヶ月たった わたしたちの宝物 うとうとしたり 目をキラキラさせたり 口をぽかんと開けている 交…

未来への不安か、期待なのか

"自分を勘定に入れずに" 自分に篭りそうになると 浮かんでくる一文 全体の中のわたし そうスイッチすると ふあっと目が覚める 高齢の夫人の食事を介助する ティースプーン半量の粥を ひとさじひと匙 数時間かけ根気強く運ぶ 息子の口に離乳食を 運ぶ日もそう…