息子

かわいいかわいい息子の

頭から血がしたたり

腫れ上がった瞼は紫に

額に優しく唇をあてた母親は

どれほどの愛おしさを

持ち合わせていただろうか

 

最後のときは

まるで出産のときの

家族写真のよう

 

母に顔をなでられ

父に手を握られていた

 

最後のとき二人を待っていた彼は

親孝行ですと

傲慢な言葉を私は放った

彼はありがとうを言いたいだろうと

心配をかけたくないだろうと

そう思って言葉を探した

 

30年生き そして帰っていった彼は

今朝 目が覚めたとき

どんな気持ちで家を出たのだろう

どんな毎日を生きていたのだろう

好きな子はいただろうか

昨夜やっていたバラエティー番組を

観ていただろうか

 

私が明日 死ぬとしたら

私は後悔するだろう

 

家族の悲しみ

悲しみ

悲しみ

 

それでも生きていかなければならない

家族の悲しみ

悲しみ

悲しみ

 

私は心配で心配で

寂しくて寂しくて

きっと後悔するのだろう