突然に一人の母の命の火が消えかかる

本当にあったのだ

 

それは燃え続ける灼熱のジャングル

全速力で走り続ける終わらない短距離走

心臓が疲れて止まるほどの苦しみに

耐えるしかないなんて

 

彼女はこれまでに3回命をかけたことがあった

光の中に3人の子どもの顔があった

それは本当に光だった

 

その日から家族の日常は崩壊した

 

父は母の命をつなぐため必死に怒り

3人の子どもへの愛を確信した

母を病床に一人にしないために

毎日絶えず近くにいながら

震える心で子どもたちを見つめた

 

子どもたちは黙っていた

我が儘は言わなかった

寂しいと小さく泣いたりしたが

大人たちに従って懸命に生きた

 

家族の家は時間が止まっていた

子どもたちに食べさせるはずの

食材が手付かずで朽ちていた

家事の動線から

母の存在が手に取るようにわかった

 

冷蔵庫に子どもたちの写真があった

もう同じ日常には戻れなかった

たとえ同じ場所でなくても

 

母が今生きているこの時

この間にきっと叶えなければならないこと

やらなければならないことが

私たちにはあった

 

私は生きていた

私はまだ生きていた

私は父であり夫だった

 

わかっていることは

どれだけ大切な存在でも

その存在の苦悩や別れが

目の前に差し迫る

 

私もまた失われる存在

今生きている私は

どうするべきなのか