右手が左手を傷つける

医療現場で

若者ひとりの命を

なんとか取り止めるために

毎日 数十人の手が

毎日 数十本の点滴が

絶えず関わっていく

 

同じとき

ミサイルを作るために

毎日 数百人の手が

絶えず関わっていく

 

戦争によって傷ついた人は

どうやって生き延びれるのか

金持ちの国の最新の施設で

毎日 数百人の手をかけて

ようやく繋がる命なのに

 

ようやく繋がる命たち

一瞬で消す兵器

 

その命のためにと開発された

命を永らえるための機械たち

 

人は

命を終わりにしたいのか

永らえたいのか

 

小さなほころびが

小さな子どもの命を脅かし

大きな過失に

気がつかぬまま

ただひたすらに

命のためにと

正義の大義

汗を流し続ける

 

そして私は

健康であるのだ

なにも失っていない

 

傷だらけの男に

声をかける

大丈夫ですよと

相応しい言葉はない

どこの言葉も違和感だが

声をかけること自体が

必要なのだろうか

 

男と、私は何日も一緒にいるが

私は男のことを知らない

 

共に男のために働く

彼らのことも

本当はよく知らない